0歳児の手の3次元データを保存した話

昨年、子供が生まれた。
小さな手足が可愛く、すぐに大きくなってしまうと思ったので、専用のインクを買ってきて手形と足形のスタンプを色紙やらTシャツやらに押した。しかし、どうしても何か物足りない。
より多くのデータを残すことを良しとする社会に呪われたせいか、子供の手のひらや足の裏の2次元情報だけを残しておくのでは満足できない。

そういうわけで、5月頃にどうしたら3次元情報を残すことができるのかをネットで調べ、水と混ぜると数分で固まる立体コピー材なるものがあることを知る。植物性由来で固まる時に熱を発さないのでちゃんと赤ちゃんの手でも基本的に大丈夫らしい。ご丁寧に、コピー材の粉と、コピー材でできた型に流し込む石膏の粉まで付いたテトリッコというキットが販売されていた。注文してお金を振り込むと、翌日には北海道の日本シーコンから航空便で届いた。

子供が起きている間はじっとしていてくれないので、眠っている間に勝手に手の型を取らせてもらう。コピー材の粉と水を混ぜて固まるスピードや子供の寝ているときの体勢を入念にシミュレートした後、手の型を取った。時には体勢が悪かったせいか、思い通りの型が取れなかったり、時には眠りが浅かったために、型を取っている途中で目を覚ましてまだ柔らかいコピー材を何度もにぎにぎされて失敗した。幾度かの後、何とか満足のいく型を取り、石膏を流し込んで、ようやく子供の手の石膏が完成した。
この時点でとりあえず3次元情報で子供の手を残すという目的は達成した。しかし、出来上がった石膏は脆そう。このままだと情報がすぐに揮発してしまいそうだという恐怖に駆られる。

僕は富山の射水(旧新湊)で育ったのだが、隣に高岡という町がある。この町は藤子・F・不二雄の出身地として知られるとともに、伝統工芸品として高岡銅器という総称があるほど、鋳物産業で有名なのだ。今回はその高岡にある藤巻製作所にお願いして、石膏を原型として、銅像を作ってもらうように発注した。1ヶ月程で完成し、お盆に富山に帰った時に受け取ってきた。鋳造の仕方には色々あるのだけれど、ロストワックス製法を用いたそうな。

銅像の表面はクリア塗装をしてもらったので、銅が腐食しないようになっている。小さいけれど650gほどと意外とずっしりくる重さ。見た目は意図せずドラクエのマドハンド。もちろん、世界に1点物。腕時計や指輪などのアクセサリーホルダーもしくはペーパーホルダーとしても使えるので、大満足の仕上がり。
こうして子供の手の3次元情報を半永久的に残すことに成功した。子供が大きくなったときに、これがお前が0歳の時の手だよと教えてやろうと思う。

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tishibas
ソフトウェアエンジニア
1988年、富山生まれ
写真撮影が趣味
1児の父

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